元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「ほらね、君はまたそうやって私たちの邪魔をするんだ」
ぼそぼそと呟くように続けた彼の赤い眼が、不穏に光った気がした。
「先生!!」
なぜかわからない、わからないけれど嫌な予感がして私は叫んでいた。
――一瞬の出来事だった。
ルシアン様がローブの中に隠し持っていた細身の長剣を手にユリウス先生に斬りかかる。
振り下ろされたそれを、しかし先生は軽くかわすと胸から取り出したペンのようなものでルシアン様の腕を思いきり叩いた。
「いぎゃっ!?」
そんな短い悲鳴を上げ、ルシアン様は手にしていた剣を簡単に取り落とした。