元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 そうして先生はルシアン様の耳元で何か小さく囁いた。
 途端、ルシアン様の顔がさっと蒼ざめるのを見た。そんなときだ。

「先生ー! 何があったんですかー!?」
「!?」

 そんな大声が降ってきて驚き見上げると、数人の生徒が寮の窓から心配そうに顔を覗かせていた。
 当然だ。これだけ騒いでいれば早朝でも誰かしら気付くに決まっている。
 幸い、ラウルと私は植え込みの陰にいて彼らからは見えていないようだったけれど。

「もう大丈夫です。不審者を捕まえましたので、このまま当局へ連れて行きます」

 ルシアン様をフードで隠し見えないようにして先生はそう答えた。
< 66 / 260 >

この作品をシェア

pagetop