元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第十二話
「そんなことが……」
今あったことを話すと、隣に座ったアンナは呆然と呟いた。
アンナは起きたら私が部屋にいなくて慌てて探してくれていたそう。
「ごめんね、起こそうか迷ったんだけど、やっぱりアンナに何かあったら嫌で……」
現に、ラウルが大変な目に遭ったのだ。
するとアンナはふるふると首を横に振ってから笑顔を見せてくれた。
「ううん。レティが無事で本当に良かったわ」
「ヤバかったのは俺だけどな」
そう言って、いつの間にかどこかへ行っていたラウルが戻ってきた。
と、その手に握られているものを見てギクリとする。先ほどのナイフだ。
まだその刃にはラウルの血がついたままで、先ほどのことが全て現実にあったことなのだと思い知らされる。
「そのナイフ、ラウルのものなの……?」
「違う。アイツが隠し持ってたもんだ。俺がちょっと声掛けたらいきなりグサっだもんな」
先ほどの長剣といい、あのローブの下に一体いくつの武器を隠し持っていたのだろう。
そう考えたら改めてぞっとした。
「でよ、気になったのがこの紋章だ」
「紋章?」
「見覚えないか?」