元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「そうみたい」
「そんな……」
アンナがショックを受けたように口を覆った。
「クラウスは騎士だったから、命令には逆らえなかったんだと思う。でもセラスティアもちゃんと受け入れてたし、だからクラウスは全然悪くないの」
そうなるべく明るく話すと、ラウルは「そうか……」と小さく呟いた。
それから少しの沈黙が流れて。
「とりあえず、ユリウス先生が帰ってきたら色々訊きまくろうぜ」
「僕がなんですって?」
「ユリウス先生!?」
いつの間にか先生がラウルの後ろに立っていてびっくりする。
「ここで何をしているのですか」
私は急いで立ち上がり訊ねる。
「先生、大丈夫だったんですか!?」
「僕ですか? 別に問題ありませんよ。彼は無事引き取ってもらいましたから」
「隣の王子様をか?」
ラウルがナイフを見せながら試すように言うと、先生は少し瞳を大きくしてからふぅとため息をついた。
「やっぱり、そうなんですか!?」
アンナが興奮したように訊く。
すると先生は学園の方へ足を進めながら言った。
「ここではなんですから、中へ行きましょうか」
私たちは顔を見合わせてから、先生の後について行った。