元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第十三話
「まず、この件については他言無用でお願いします」
ユリウス先生は本の積み重なった机の向こうに腰を下ろすと、そう切り出した。
昨夜に続いて先生の部屋に通された私たちは緊張を覚えながらその続きを待った。
「貴方たちの推測通り、彼はエストガリア王国の第二王子リュシアン殿下に間違いなさそうです」
私は息を呑む。
「やっぱり」
アンナが隣にいる私にしか聞こえないような小さな声で呟いた。
そして先生はラウルに視線を向けた。
「ですので、貴方からしたら不本意でしょうが、この件はくれぐれも内密にお願いします」
先生がもう一度念を押すように言うと、ラウルは腕を組み偉そうな態度で答えた。
「わかってるよ。俺だって面倒事はごめんだからな。それに……」
「えぇ、それがミス・クローチェを守ることにもなります」
私は目を見開く。
(先生も、アンナと同じように考えてくれていたんだ)
と、ラウルが小さく舌打ちするのが聞こえた。
「そ、それで、その彼はどうしたんですか? 引き取ってもらったって……?」
アンナが訊くと先生は変わらず淡々とした調子で答えた。