元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「詳しくは言えませんが、とある信用のおける方に頼みました。彼はすぐに本国に帰されるはずです。ですから、もう心配は要りません」
「そんな説明で安心出来るわけねぇだろ!」
バンっと大きな音を立ててラウルが先生の机に手を着き、私とアンナは首を竦めた。
ユリウス先生は眉一つ動かさずにそんなラウルを見ていた。
「ユリウス先生、あんた何者だよ。ただの教師じゃねーんだろ?」
「僕はただの教師ですが?」
「嘘つけよ。あんなことが出来る教師がどこにいんだよ。武器まで隠し持ってさ」
「武器?」
「誤魔化すなよ。俺たち見てたからな、あんたが奴の腕をペンみたいな武器で刺すところ」
「あぁ、これですか?」
先生はあの時のように胸ポケットからそれを取り出した。
「みたいな、ではなくただのペンですよ。それにキャップはしたままでしたので刺してはいません」
「……っ」
先生の言う通りそれはどう見てもただのキャップ付きのペンだった。
それでもあの勢いで叩かれたら普通に痛そうだ。彼が剣を取り落としたのも無理はない。
「ミス・スペンサーと同じです」
「え?」
急に呼ばれたアンナが声を上げる。