元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――現に私はあの言葉で落ち着きを取り戻し、聖女の力を使うことが出来た。お蔭でラウルの命が助かった。
先生の判断は正しかったということだ。
「僕には前世の記憶はありません」
「そう……ですか」
もう何度も言われているその言葉にがくりと肩を落とす。
「――あ、あの先生、レティはこのまま学園にいてもいいんですよね?」
「!」
そう訊ねてくれたのはアンナだ。
そうだ。今日にでも私は家に帰されるという話だった。
しかしもう誘拐の心配はなくなったのだ。――ということは。
「えぇ」
先生が頷き、私は思わず歓声を上げそうになった。
「ただ、彼女の力のことはくれぐれも他の方にバレないように。その薔薇もです」
「あ……」
薔薇のある胸元に手を当てる。
「あのとき誰も見ていなかったとは思いますが、万が一ということもあります。念のため気を付けて過ごすようにしてください」
「はい!」
私はしっかりと返事をする。
「それと、学園内ではもう二度とその力は使わないように」
「はい。わかりました」