元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――その先?
先生はなぜか眼鏡を外して胸ポケットに差し入れた。
初めて見る眼鏡越しではない先生の瞳は吸い込まれそうな色をしていて。
と、その手が私の肩に優しく添えられてドキリと心臓が飛び上がる。
「え? せん……っ」
先生の端正な顔がゆっくりとこちらに近づいてくる。
(ぇ、え? えぇーー!?)
細められたアメシスト色の瞳がすぐそこまで迫ってきて、顔が熱くて、心臓が破裂しそうで、耐えられずに私はぎゅっと目を瞑った。
「冗談です」
「……へ?」
パっと目を開けると、先生はもうこちらに背を向けていた。