男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
コンコンコン。

ショーンはゲストルームのドアをノックする。
最上階にあるこの部屋は、国王や貴族などが滞在する時に使う為の豪華な部屋だ。

カイルの団長就任式の時に一度国王陛下が使って以来だった。

「はい。」
緊張した面持ちで、ショーンは部屋に足を踏み入れる。

一応、ショーンもハミルトン侯爵家の三男だ。しかし、昔から堅苦しいのが大嫌いで、勝手に家を飛び出して以来一度も帰っていない。
貴族と話すのも苦手だ。

「挨拶が遅くなり申し訳ありません。」
胡散臭い作り笑顔と共にルイに臣下の礼をする。

「ああ、副団長殿。
うちの姫が無鉄砲に飛び出してしまったようで、大変迷惑をお掛けしております。

ところで、カイル団長の容態はいかに?」

何処まで護衛が話したかは知らないが、サラ妃が居ないのは承知の上でホッとする。

「カイルは鍛えているだけあって頑丈ですから、少し休めば直ぐに回復しますので心配しないで下さい。
昨夜もあれからサラ嬢を探しに行こうと飛び出すので、強制的に休ませたまでです。」

苦笑いしながら隠し事なくルイに伝える。

「何処まで出来たお方なのか…。」

「本当に…あの男の代わりに朝から忙しくしてますが、既に逃げ出したい思いです。」

「出来た君主を持つとお互い大変ですな。」
ボルテ公爵に目線を落としルイが言う。

「ところでボルテ公爵様のご様子は?」

「まだ、完全に目が覚めない様子で…たまにうわ言の様に名前を呼ばれたりしますが。」

「食事は取られましたか?」

「ええ、それは問題無く。
ただ、幻覚や幻聴があるようで…正気を取り戻すまでには時間がかかるかと…。」

「サラ様が聖水を持って無事お戻りの際は、直ぐにお声掛けしますので。」

「で、誰がデマを流したのか分かりましたか?」
「はい…実は…。」
ショーンはルーカスの一部始終を話して聞かせる。

「そうですか…。彼にも同情の余地はありますな。好きで情報を流した訳では無いのなら。」

「そうですね。カイルの傷を1番に心配していたくらいですから、少なからず敬愛心はあったのかと思いますが…こればかりは国王陛下がお決めになる所です。」

「うちの姫が無事に帰って来れれば、お咎めも温情あるかと思いますが…。」

「ところで、ルイ殿に1つ伺いたいのです。
カターナ国には貴族が所有する竜が50匹ほどいると聞きます。
全ての竜の所有者を調べたいのですが、何か良い方法はありませんか?」

「そうですね…。国防省が竜を管轄していますが、今や我が国の誰を信用していいものか、考えあぐねます…。

そうだ!!
民間企業ですが、竜の餌を一気に取り扱う業者が一件ボルジーニに在ります。
そこに名簿もあるのでは?」

「なるほど!!
貴族に関わらない民間人の方が、よっぽど信用出来ると言う事ですね。」

「直ぐに手紙を書き伝書鳩で届けます。」

「助かります、ありがとうございます。」
直ぐに対処出来そうでショーンはホッとする。
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