男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
カイルはランプを持ち、地下の薄暗い通路を進む。
カビ臭く湿気が溜まった空気は重い。

見張りは二人敬礼をして立っていた。
「交代は何時間おきだ?」
カイルは聞き、2時間おきだと答える。
「人数を増員し、1時間おきにしろ。」

「はっ。」
こんな所に長く居たら心も体も病んでしまう。

1番奥のもっとも薄汚い牢に小さくうずくまった男が一人ポツンといた。

ふーっと小さく息を吐きカイルは声をかける。
「ルーカス、気分はどうだ?」
はっと顔を上げ、急いでこちらに近付いてくる。
顔は薄汚れ疲れも見える。
先日までの明るい青年と、同一人物かと思うほど落ち込み、疲弊した顔をしていた。

「カイル団長!
お怪我は大丈夫ですか?
僕のせいで本当に、本当に申し訳けありませんでした。」
汚い床に頭をつけてルーカスは詫びる。

「この怪我はお前のせいじゃ無い。
俺の判断ミスだ、気にするな。

お前の1番の罪はリューク殿を欺いた事だ。
信頼し、共に勉強し得たものは大きいはず。そのお前に裏切られたと知ったら、その心痛はいかばかりか…」

ルーカスの顔が歪み、口を一文字に結び今にも泣きそうだ。

「なぜ、早く誰かに打ち明けなかった?

そんなにここはお前にとって心開けない場所だったか?
三年間、ここで過ごして何も得るものは無かったか?」
やるせ無い思いをカイルは吐き出す。

「いえ…
この場所は僕にとって、第二の家族が出来たと思うくらい毎日が刺激的で、良い仲間にも恵まれ大好きな場所です。」
涙ながらに叫ぶ。

「でも、その仲間達をお前は裏切り売ったのだ。それが、家族の為であっても許される事では無い。
ここで築き上げた、団員からの信頼も全て無になったのだ。罪を償うしか方法は無い。」
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