男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
「マリーとカンナは明日の早朝には到着する予定だから、安心して欲しい。」
明日のドレスの着付けやサラの身の回りの世話をしに、カイルの計らいでわざわざ気心の知れた二人を呼んでくれている。
「いろいろ気遣って頂き、ありがとうございます。」
「サラ、忘れて無いか?
君は俺の婚約者だ、守られて当たり前だと思って欲しい。」
「はい……。」
急に言われて、サラは頬を染めて俯く。
「ほら、城が見えてきた。」
カイルにそう言われてそっと顔を上げると、目の前に白い壁に塗られたお城が目に入る。
月明かりに照らされて、とても綺麗な城だった。
馬の歩みがふと止まったと思ったら、ぎゅっと後ろからカイルに抱きしめられる。
サラの心臓がドキッと躍る。
「今まで、なかなか時間が取れなくて悪かった。」
「いえ…、私もいろいろバタバタしてましたし…。」
ずっと明日の為に忙しくしていたカイルの事は知っている。それでも時々サラの為に、お菓子や果物、洋服やアクセサリーなどいろいろな物を届けてくれた。
「アクセサリーや果物など沢山送って下さって、ありがとうございます。」
サラが今日身に付けているネックレスもカイルが送り届けてくれたアクセサリーの1つだ。
「やはりそれ、サラに似合うと思っていた。」
そう言って笑うカイルにびっくりしてサラは抱き締られたまま振り返る。
気付いてくれていたんだと驚くと同時に、忙しいのに自らの目で選んでくれていたのだと驚く。
ネックレスは星形にかたどった銀の土台の真ん中に大きめのエメラルドが輝き、周りは小さなダイヤが散りばめられていた。
「サラの瞳と同じ色だ。」
そう言って見つめてくる。
サラはどうしていいか分からず目が泳いでしまう。
カイルはそっとサラの頬を撫でて、風になびく髪を耳にかけ、額にキスをする。
サラは何が起こったのか瞬間理解できず、固まってしまう。
頬がボッと熱くなり、恥ずかしくなって前に向き直る。
「明日が終われば、俺も少し休もうと思う。
サラと一緒にカターナ国へ行けたらいいと思っている。」
「えっ…、お休みが取れそうなのですか?
…明日で全てが終わるとお考えで?」
サラは信じられないと言う気持ちと、そうであって欲しいと願う気持ちで胸が締め付けられる。
「信じ難いと思うが、やはりカターナ国国王が絡んでいるのではと考えている。
明日の晩餐会にはカターナ国王陛下と大臣が二人、側近が一人参加予定だ。」