男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
一曲目で覚えたらしいカイルは、サラの手を取ってダンスの輪に入る。

2人向かい合って挨拶をして組合い曲を待つ。
緊張でサラの手先は震えてしまう。

「出だしはどっちの足だった?」
カイルが小声でサラに聞く。

「えっ⁉︎そこからですか⁉︎」
びっくりして仰ぎ見るといたずらっ子の笑い顔でこちらを見ていた。

曲が始まり動き出す。カイルはさっき覚えたてとは思えないくらいスムーズにリードしてくれる。
初めはカチカチだったサラだったが、クルクル回され、抱き上げられて段々楽しくなって来て、最後の方はひと目も気にせず、まるで2人きりの時の様に笑い合って、終える事が出来た。

サラ達に向けらたのかは分からないが、会場内は拍手喝采、ボルテとルイも満面の笑みでこちらに拍手を送っている。

「もう一曲踊るか?」
サラは少し息が切れてしまったのに、まったく平気そうなカイルを羨ましく思う。

「さすが、カイル様…、私はちょっと休みたいです。」

「分かった。」
可笑しそうに笑いながら、乱れたサラの前髪をサラッと触って整えてくれる。
微笑み返しながらお互い見つめ合っていると、

「仲が良くて何よりだが、ちょっと焼けるな。」

近くで声がして振り返ると、国王陛下が立っていた。

2人は急ぎお辞儀をして国王と向き合う。

「サラ嬢、一曲踊ろう。カイル少し借りるぞ。」

サラは、差し出された手を握るしか無く、カイルは苦笑いをして、場所を譲るしか無かった。

「一曲だけですよ。」
ただ、カイルは入れ替わるタイミングで国王にそっと威嚇する事は忘れなかった。


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