男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
ビクッとサラの体が揺れる。
「サラ?分かるか?」

冷たい指先が微かに動く。
カイルは息を吹きかけサラの指先を温める。

サラの瞼が揺れる。
「サラ?」
サラの頬に触れてみる、薄く目が開かれる。

「サラ?」

視線が揺れて目が合う。
「分かるか?」

「…カイル、様…。」

「ああ…良かった…。」
カイルにとって、こんなに恐い事は今までなかった。頬に触れていた手が震える。両手でぎゅっと抱きしめる。

「もう、大丈夫だ…。
怪我は無いか?痛い所は?」

「…大丈夫、です…。」
体のあちこちが少し痛いし、頭がボーっとして意識がはっきりしないけど、カイルが側にいるからもう大丈夫。

サラもカイルの体に手を回し抱きしめる。

「脱出する。…走れそうか?」
こくんと頷き、サラは立ち上がろうとする。まだ足に力が入らない…

「大丈夫だ。サラくらい抱き上げて走れる。」
カイルは笑って答える。
「体が冷たい。もう少し、聖水を呑めるか?」
小瓶を渡そうとする。サラは首を横に振り、
「持って、きてます…。」
どこに?どう言う事だ?

サラは何とか立ち上がり、カイルから離れる。カイルもすかさず立ち上がり、支えようとする。

「あの…、ちょっと後ろを向いていてくれますか?」
首を傾けながらもカイルは後ろを向く。

「実はスカートに少し細工をしています。
何かあった時身軽になれる様に…。」

ガサガサとサラは何やら音を立て、小瓶より少し大きめの入れ物と、短剣をスカートの中から取り出す。
スカートのボリュームを出す為の下着、パニエが簡単に取り外し出来るよう作られている。
パニエを外して、スカートの布を外し裏返しにするとマントような外見になる。
もちろん下にはズボンを履いていた。
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