男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
「…もう大丈夫です。」
カイルが振りかえると、先程とは一転した黒一色の装いになっていた。
一見、男装をしていた頃の様だ。
「…凄いな。どうなってるんだ⁉︎」
まるでマジックを見せられた時の様に、唖然としているカイルにサラは笑いかける。
「マリナさんに、作ってもらったんです。
いざと言う時に逃げられるように、いろいろ細工をしてもらいました。」
「分かったから、とりあえず聖水を呑んでくれ、顔色が悪くて心配だ。」
カイルに促され、持参した聖水を半分ほど呑む。
徐々に体がぽかぽかしてくる。
カイルは目を合わせ、生気が戻ってくる様子を確認して安堵する。
「…ここは?…あっ!ネックレスが…。」
最後手首に巻いて持っていた筈のネックレスが無い。
サラは慌てて床を這う様に探す。
「サラ、今はいい。
もうネックレスは役割を果たしてくれた。」
そう言って抱き上げる。
ドアの開く側と反対側に二人身を隠し、
カイルはドアに耳を当てそっと聞き耳を立てる。
「ドアの向こうに3、いや4人いる。」
カイルが隠し持っていた短剣をズボンの裾から取り出す。ボルテから預かっている。カサンドラ家の家紋の付いた短剣だ。
それをサラに握らす。
カイルはサラが隠し持っていた短剣を持ち構える。
「ドアが開いたら、扉の後ろに隠れて。俺が一気に4人倒す。」
サラは頷き身構える。