男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
それから一週間が経ち、

すっかり元気になったサラはカイルとボルテ、ルイと共にボルジーニに帰国する日となる。

「陛下が旅立つ前にサラと話がしたいらしい、ちょっといいか?」
身支度を整えているとカイルがやって来た。

「はい。これまでのお礼を兼ねて今から伺おうかと思ってました。」

「一緒に行こう。」

そう言って、手を繋なぎ廊下を歩く。
ここに来てからすっかりそれが当たり前になっているが、サラはまだ慣れず恥ずかしくて仕方がない。

どうか知り合いに会いませんようにと心の中で祈ってしまう。

「サラ、陛下に何か誘われても断れよ。」
どう言う事?首を傾げてカイルを見上げるサラの頭を優しくポンポンされる。

王室前に到着して息を整えていると、警備兵が扉を開ける。

「サラ嬢、よく来てくれた!!
見舞いに行きたかったのだが、何故かカイルが抜けた後、私の仕事も忙しくなってしまって、なかなか自由が効かないのだ。
元気になったようで何よりだ。」

「気にかけて下さりありがとうございます。
父の事、カターナ国の事も、いろいろとご尽力頂き、改めてお礼をさせて頂きたいです。」

「それは隣国として当たり前の事をしたまでだ。
それよりも、私が守る事が出来ず、サラ嬢に怖い思いをさせてしまった事に申し訳なく思っている。カイルにもすまない事をした。」
二人向かって頭を下げる国王陛下に、とんでもないと言うようにサラは困ってカイルを見る。

「陛下、もう終わった事です。
結果的にサラは無事ですし、カターナ国の立て直しにご支援、ご協力を頂き我々としては助かっております。お気になさらず。」
カイルはそう言う。

「そうか、そう言ってもらえるならば少し心が軽くなる。
まぁ、カイルが抜けた後を埋める者がいなくて心細いが、何かあったら直ぐ呼び戻すからそのつもりでいてくれ。」

不敵にカイルに笑いかけ、陛下は少し寂しそうな顔をする。そして、椅子から立ち上がり自ら段を下りて二人に近付いてくる。
カイルに手を差し伸べて握手を求める。

カイルは向き合いながら、手を合わせ敬礼をする。
「今までありがとう。これからも何があった時にはそなたを頼るかもしれん。どうかこの先も友として心通わそうぞ。」

「身に余る光栄です。」

「サラ殿も、どうかこれからも妃共々仲良くして頂きたい。」

「こちらこそ。よろしくお願い致します。」
うん。と頷き陛下は、サラにも握手を求める。
サラは両手で陛下の手を取り低く腰を曲げる。
「カイルより先に会えていたら、私の側室にでもしたかったな。
コイツに愛想が尽きたら直ぐ私の所に来て欲しい。いつでも歓迎するぞ。」

「陛下…手を離して頂きたい。」
カイルは不機嫌そうな目を陛下に向け、サラから手を離すように促す。

「まったくサラ嬢の事になると、とたんに心が狭くなる。」
 笑いながらサラの手を離し、陛下は指を鳴らし使用人を呼ぶ。
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