男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
ボルテとルイは馬車と船を使いボルジーニに帰るので午前中に既に出発していた。

カイルとサラはハクとブルーノに乗ってカイルの邸宅に寄り荷造りをしてから、ボルジーニへ向かう予定だ。

このカターナ国に来て、サラにとってはいろいろな事のあった3ヶ月となった。
カイルに会えた事、父を助けられた事、何より、母国が正常に戻った事が嬉しいと思う。

使用人のマリーとカンナの親子は馬車でカイルの邸宅へ向かう為、ボルテと一緒に午前中に出発していた。

城内で一週間暮らしたゲストルームを見渡し、サラは物思いにふける。

カイルは、団員に別れを告げに出て行ったまままだ帰ってこない。

ベランダにはブルーノが、荷物を付けていつでも飛び立せるよう待機している。

「サラお嬢様、少しお座りになってお茶でもいかがですか?」
ララが声をかける。

皆があの時、密偵だと思って疑わなかった彼女は実は、皇后陛下の使用人だと言う事が後で分かった。

皇后曰く、16歳でカターナ国から嫁いでから、出産と育児に追われ友達と呼べる人が居なくて寂しい思いをしていたらしい。

陛下とカイルの友情関係をいつも羨ましく思っていたのだった。

そのカイルの婚約者であるサラと仲良くなりたいと密かに思い、サラの人となりを知る為にララを送り込んだのだ。

まさか密偵と疑われるなんて思いもよらず、皇后陛下からは何度も謝られてしまった。

逆にカイルは密偵と疑がった事を申し訳ないと謝罪していた。
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