男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
他にどんな癒し効果があるかはまだ分からないが、傷を治す事は確かだろう。人間にも効くのだろうか?

お兄様は知っていたのかしら?

多分…知らなかったはず…
今更悔やんでもどうしようもないわ…

この場所は私とブルーノの秘密の場所。

他の人に教えたらきっと、たちまち人々が訪れてこの桃源郷は踏み躙られてしまうわ。

サラはそっと両手を湖に伸ばし水を少しすくい上げ一口舐めてみる。不思議と甘さを感じて驚く。
砂糖水みたいに甘い。

そして、悲しみに沈んだ心が晴れていくような不思議な感覚に浸る。 

そうだわ。泣いてなんていられない。
父の無実を晴らさなくちゃいけない。
お父様を助け出せるのはもう、私しかいないのだから。

足早にブルーノの元に戻ったサラは次にやるべき事を既に見出していた。

「ブルーノありがとう。
こんな素敵な場所を教えてくれて、私を元気付けようとしてくれたのね。
お父様を救い出してみせるわ。私に力を貸してね。」

ブルーノの首に抱きつきサラは気持ちを新たにする。

「ルイとジーナが心配してるわ。戻りましょう。」

カプっとサラの服を甘噛みし背に乗せたブルーノはバサバサと飛び立ち林に守られた桃源郷を後にした。


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