男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
第二章
カーサの長い冬がようやく終わりを告げ暖かい春の光が差し始めた頃、
サラとブルーノは旅支度を始める。

冬の間、サラはルイと父の無実を証明する為にどうすれば良いか入念に話し合った。

結論から言うと、このカターナ国内はもはや誰が敵なのか味方なのかが分からない状態だと言う事。

父の親友だった隣町の領主リチャード公爵様でさえ、父に不利となる証言をした。

協力をお願いするのは、友好国である隣国のリアーナ国国王陛下が1番最適なのでは、とルイは言う。

しかし、没落した令嬢の訴えなど直接国王の耳に届くはずも無い。

ならばせめて国王に意見を述べられる身分の方、もしくは国王の信頼を得ている人物を味方につける事が最善だと考えた。

「1人適任者が居ます。」

国王の使命で父が外交官を務めていた頃、父の右腕としてルイは共に何度となくリアーナ国に渡っていた。
そのルイから適任者だと言わせる人物。

「それは、どなたなのですか?」

「隣国の守護神と言われる男、竜騎士団の団長 カイル・マルクス様です。」
確かな信頼を眼に宿しルイが言う。

「その方はどんな人物なのですか?」

「彼はとにかく凄い。

隣国の王が絶対の信頼を寄せる人物ですが、元々は貴族出身では無く平民の出だと言う事です。しかも、孤児院の出だと言う。
まさしく、実力だけで今の地位まで上り詰めた男です。」

ルイが言うには、カイル団長は現在28歳で今の地位に着いたのは三年前、
騎士団の一員に過ぎなかった彼は、他国との戦いで王を救い、1人盾となり王を守り抜いたと言う。

白い竜に乗り、彼が歩く後には敵の屍の山が出来るほど剣術に優れ、指揮官としても人を惹きつける魅力があり、申し分ない人物らしい。
どんなに屈強で強面な男なんだろうと想像してサラは正直怖いと思ってしまった。

そんな人が私なんかの相手をしてくれるだろうか…
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