怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
エピローグ
十一月。あっという間に秋が過ぎ去り冬の足音が近づく頃、沙綾と湊人は拓海に連れられて、世田谷区にある彼の実家を訪れた。
三年前は期間限定の予定だったため拓海がひとりで結婚の報告をしたらしいが、さすがに今回はそうはいかない。
入籍を済ませているどころか子供までいる状態での挨拶は、拓海の父に一体どう映るのか。はたしてこの結婚は受け入れられているのかと不安でいっぱいだった。
それに、弟の大地の件もある。
勘違いが元とは言え、彼は沙綾に対しかなり嫌悪感をあらわにしていた。
浮気は事実無根だが、拓海を信じきれずに彼の元を去り、ひとりで湊人を産んだのは事実で、外交官という職業を理解していなかったと言われれば反論できない。
拓海は「大丈夫だ」としか言わないが、歓迎されないかもしれないと何日も前からソワソワしている。
先週は実家があった場所の近くにある沙綾の両親が眠る寺へ三人で行ってきた。
拓海は長く手を合わせていて、なにを話したのかと聞いたが、結局は今も詳しくは教えてもらっていない。
『俺とご両親の秘密だ。だがまぁ、主に謝罪と誓いだな』
内容こそわからないが、ずっと自分を見守ってくれている両親なら、誠実な拓海を気に入っただろう。
沙綾も手を合わせ、両親に結婚を報告した。今度は逃げるための手段ではない、本当に愛する人と一生一緒に生きていくという幸せな結婚報告ができて、沙綾もホッとした。