怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
3.ドイツでの幸せな結婚生活

拓海の務める在ドイツ日本国大使館は、首都ベルリン中心部のミッテ区に位置する。

有事の際すぐに駆けつけられるように、住居は指定の区域が決められており、沙綾と拓海は緑豊かなティーアガルテンに程近いアパートを新居に選んだ。

ティーアガルテンはブランデンブルク門の西側に東西約三キロに渡って広がる森のような公園で、北端にはベルビュー宮殿、現大統領官邸がある。

ベルリン屈指の観光地であり、地元の人々の憩いの場でもある。

アパートはテーマパークの城のような重厚な外観で、六階建ての最上階の部屋からは、朝から園内をジョギングする人の姿も見られた。

3LDKの間取りで、各個室はこぢんまりしているものの、リビングダイニングが大きく取られていて、天井の高さも相まってとても広く感じる。

家具家電付きの物件を手配していたため、引っ越しは自分たちの身の回りのものだけで済み、片付けも大した手間ではなかった。

そのため、初日から手持ち無沙汰になり、沙綾はふたりきりの空間にドキドキする羽目になった。

夫婦とはいえ当然寝室は別。夜の夫婦生活もなし。

対外的には夫婦のフリをするので軽い身体接触はあるものの、家の中では夫婦ではなくルームメイト。

生活費の一切を拓海が出す代わりに、沙綾が家事を一手に引き受ける。

日本にいる間にふたりで決めた契約結婚の条件は、ドイツに来て一週間経った今も守られている。

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