怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
6.ときめく三人暮らし
六月。夏本番にはかなり早いが、連日気温の高い日が続き、今日も抜けるような青空が広がっている。
二ヶ月前、当面の着替えや身の回りの必要なものだけを持って、拓海のマンションへ引っ越した。
急な契約結婚の再開に拒否の姿勢を示した沙綾だが、約三年前に交わした契約の正当性を主張され、期限は予定通り七月十日まで、ただし湊人が環境の変化に耐えられず、不安がる素振りを見せた時点で同居は解消するという条件付きで受け入れた。
そのため、母子ふたりで住んでいたアパートは解約しないままだ。拓海もそれに同意し、湊人を最優先に考えると約束してくれた。
ドイツにいた頃と同様、生活にかかる費用の一切を拓海がもつと主張したため、沙綾が家事を引き受けるはずだったが、拓海は首を縦に振らなかった。
「今は沙綾も仕事をしているし、湊人くんの育児もある。家事は分担するか、ハウスキーパーを雇えばいい」
そう言われたものの、ハウスキーパーを雇うだなんておこがましい気がするし、以前にも増して忙しそうな様子の拓海に家事をさせるだなんてできない。
来週に控えたG7や首脳会談の準備で、外務省だけでなく各省庁が慌ただしく動いているらしい。
ニュースでも各国のトップが何日に来日するのかなど、毎日のように報道されている。
拓海も例外ではなく、朝早く出勤し、夜は沙綾と湊人が眠った後に帰ってくることもしばしば。
顔を合わせるのは、出勤前のほんのわずかな時間だけだった。
三人での朝食を終えると、拓海は空になった食器をシンクに下げてくれる。