自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
「葉夏は胸がデカイ。腰も張ってて膝下も長くセクシーだ。それに連れて歩くには、俺とバランスがいいだろ? 高身長でスタイル良し。しかも極上の美女だ。こんな良い女放っとけるか」

 葉夏先生にアプローチするのは敬太先生みたいに高学歴、高収入、実家も太いお金持ち、しかも外見は高身長でイケメン。

 これだけ揃って自信満々じゃないと近付けないよね。

「ほら見えてきたよ、あそこが僕らのチームの医局」
 
 ここまでけっこうな距離を走って来たのに、三人とも息ひとつ切れないで喋りっぱなしで平然としている体力は超人的。

「この辺一帯の診察室や入院室や手術室は僕らのチームの仕事場だよ」

 長い廊下の両側に数個の部屋の確認が出来て、それぞれドアの上にはネームプレートが見える。

「お疲れ様、ここは阿加ちゃんの部屋でもあるのよ」
 葉夏先生のシューズの摩擦音が少しずつゆっくり穏やかになってきた。

「今のだと院内の案内になってなかったね、近いうちにちゃんと案内するよ」

「ありがとうございます」
「波島くんには感心するわ、こうして女の子との関係を次につなげてるのね」
 へぇって口をすぼめてフクロウみたいに頷いている顔まで美人。

 真っ白な壁には摺りガラスが埋め込まれていて、内側には電気が点いている。
 部屋の前でネームプレートを見上げれば医局と書いてある。

「ただいま、お疲れっす」
「おかえり、お疲れ様。少し休憩したら?」

 元気な声で挨拶する朝輝先生を迎えた声は、囁くようなソフトな声で今さっきまでの廊下の騒々しさがかき消される。

 たったひとことなのに安心感がある声で、都会の喧騒から田舎に帰って来たみたいに癒やされる耳に心地良い声。

 触り心地が良さそうな茶色い柔らかな髪の毛は緩くパーマがかかっていて、スクラブのブルーが映えて、血色のいい白みの肌が優しさの印象を強く植え付ける先生。

「この子は阿加 麻美菜ちゃんです」
「初めまして」
 私が自己紹介をする前に、私の世話を焼くのを楽しむように朝輝先生と葉夏先生が、コーヒーを淹れている先生に私のことをあれこれ話している。

「初めまして、産科の人見 俊介(ひとみ しゅんすけ)です、よろしくお願いします」
 とても真面目な先生なんだ、ド新人で年下であろう私に敬語で挨拶してくれた。

 二十七歳だって。私より四つも年上だった。
 葉夏先生と大学時代の同級生なんだって。

 優しく穏やかな表情で話し方から想像すると、おっとりしている先生ってイメージ。
 俊介先生が一番私と性格が近そう。

「見惚れた? 人見先生も塔馬先生や僕みたいにイケメンだからびっくりしたよね」
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