自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
第四章 医局で院長と二人きり
大勢の中に溶け込むのに時間がかかる私の性格を知り尽くしているのか、先生たちも大樋さんも優しく接してくれる。
物言わぬ犬猫たちを相手にしているから、私の性格なんかお見通しなのかな。
「なぁ、貧乏くじ。なにぼけっとしてんだよ」
「考え事です」
「どうせ、またろくなこと考えてないんだろ、考える前に動けよ。ったくトロいな」
隼人院長は相変わらず。
ところは午前八時前の医局。当直明けの隼人院長と出勤してきた私の二人だけの医局。
「さっさとやっちまおうぜ、じっとしてろよ?」
覚悟を決めたように、私の目の前に隼人院長がしゃがんでから数分が経った。
往生際の悪い私を隼人院長が辛抱強く説得しているけれど、私にはあと一歩の勇気が出ないで相変わらずウジウジ粘っている。
「隼人院長、お願いします、優しくしてください」
「ようやく腹をくくったのかよ、散々悪あがきしやがって」
大きなため息をつかれた。
「痛くしないでください」
「誰だって初めては痛いんだ。動物だって苦痛に耐えているんだ、お前も我慢しろ」
「こんな思いして入れるくらいなら、もうしたくないです」
向かい合ったままの隼人院長は診療中と同じ真剣なまなざしで、私の瞳を覗き込む。
「あともう少しだ」
「さっきから、あともう少しもう少しって、ずっと」
「生意気なこと言ってんなよ、黙ってろ」
怖い。もう少し優しくして。
「ごめん。つい、力んじまった、入れたことないから」
「隼人院長ぉ、入れたの初めてなんですか?!」
「わりぃか」
隼人先生なら経験豊富そうだから、なんでも経験しているのかと思った。
「いいから動くな、じっとしてろ」
強引に迫ってくるから怖い。
「こんなに痛いこと子どももするんですよね?」
「子どもにさせるわけないだろ、見聞きしたことあるか?」
「聞いたことないです」
「周りに感化されて、やりたいって言ったって、まだ体が未熟だ。入れたらダメだ」
切れ長の目に通った鼻筋にキリッとした眉毛。
真顔が迫力あって怖い。
「怖いから笑ってください」
「おもしろくもないのに笑えるか」
眉間に険しい皺を寄せて、下唇をきりきり噛まなくても。
「痛っい!」
力まかせに隼人院長の腕を握った。
「でっけぇ声出すなよ、大げさなんだよ」
「ごめんなさい、腕痛いですよね」
「バカ言え、お前に握られたくらいで痛くも痒くもない、さてと」
「無理です、私、無理」
物言わぬ犬猫たちを相手にしているから、私の性格なんかお見通しなのかな。
「なぁ、貧乏くじ。なにぼけっとしてんだよ」
「考え事です」
「どうせ、またろくなこと考えてないんだろ、考える前に動けよ。ったくトロいな」
隼人院長は相変わらず。
ところは午前八時前の医局。当直明けの隼人院長と出勤してきた私の二人だけの医局。
「さっさとやっちまおうぜ、じっとしてろよ?」
覚悟を決めたように、私の目の前に隼人院長がしゃがんでから数分が経った。
往生際の悪い私を隼人院長が辛抱強く説得しているけれど、私にはあと一歩の勇気が出ないで相変わらずウジウジ粘っている。
「隼人院長、お願いします、優しくしてください」
「ようやく腹をくくったのかよ、散々悪あがきしやがって」
大きなため息をつかれた。
「痛くしないでください」
「誰だって初めては痛いんだ。動物だって苦痛に耐えているんだ、お前も我慢しろ」
「こんな思いして入れるくらいなら、もうしたくないです」
向かい合ったままの隼人院長は診療中と同じ真剣なまなざしで、私の瞳を覗き込む。
「あともう少しだ」
「さっきから、あともう少しもう少しって、ずっと」
「生意気なこと言ってんなよ、黙ってろ」
怖い。もう少し優しくして。
「ごめん。つい、力んじまった、入れたことないから」
「隼人院長ぉ、入れたの初めてなんですか?!」
「わりぃか」
隼人先生なら経験豊富そうだから、なんでも経験しているのかと思った。
「いいから動くな、じっとしてろ」
強引に迫ってくるから怖い。
「こんなに痛いこと子どももするんですよね?」
「子どもにさせるわけないだろ、見聞きしたことあるか?」
「聞いたことないです」
「周りに感化されて、やりたいって言ったって、まだ体が未熟だ。入れたらダメだ」
切れ長の目に通った鼻筋にキリッとした眉毛。
真顔が迫力あって怖い。
「怖いから笑ってください」
「おもしろくもないのに笑えるか」
眉間に険しい皺を寄せて、下唇をきりきり噛まなくても。
「痛っい!」
力まかせに隼人院長の腕を握った。
「でっけぇ声出すなよ、大げさなんだよ」
「ごめんなさい、腕痛いですよね」
「バカ言え、お前に握られたくらいで痛くも痒くもない、さてと」
「無理です、私、無理」