自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ
 ***

「ただいま」
「おかえりなさい、お疲れ様です。アンバーはどうですか?」
 長く広い廊下を歩きながらネクタイを緩める隼人院長のうしろをついて歩き回る。

「落ち着いている、帰宅早々患者の話か」

 お風呂にしますかお食事にしますかなんて、奥さんみたいな質問をするのが慣れなくて恥ずかしい。

「家に居たのか。あいつらと派手に遊ぶんじゃなかったのか」
 敬太先生と朝輝先生に焼きもち焼いてるんだ、可愛い。
「そうしていじわる言わないでください」

 夕食後までは淡々としておとなしかったのに、寝室に行くときは恥ずかしがる私を担ぎ上げ、強引にベッドに入り込んで来た。

 翌朝は、また隼人院長がスリルを楽しみたいって、駐車場まで二人で出勤して素早く離れて別々にセンター内に入った。

 午前中からロビーや受付や外来のクリスマスの華やかさを見ていたら、午後の休憩で医局に戻るといつもと変わらず癒やしの場所が、なぜか殺風景に見えてしまう。

「大樋さん、どこもかしこも院内中がクリスマスムード一色ですね。華やかで眩しいです」

「よし、阿加ちゃん、私たちもクリスマスツリーに飾り付けしましょう」
「やったぁ、ワクワクします、とっても楽しみです」

「阿加ちゃんは院長チームで初めてのクリスマスね、誰か手隙の先生いらっしゃるかしらね」

 医局の倉庫にクリスマスツリーを仕舞い込み、一年に一度出しているそうで壁に立て掛けてある。
 
「朝輝先生、すみませんがクリスマスツリーの飾り付けを手伝ってくださいますか?」 
 
「僕の飾り付けは大雑把になるよ、それでも良いならやるよ。可愛い阿加ちゃんのためなら」
「ありがとうございます、助かったぁ」 

「待て、お前はやらなくていい、俺が一緒にやる」
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