かけがえのないもの
そう
ちょうど1年前のあの日事件は起きた
 
起きたというよりは
起こしたと言ったほうが真実だろう
 
今でも残った傷
 
腕に不自然に残った5㎝の傷あと
 
それは
迷いもなく
カッターで切り刻んだ傷
 
 
 
 
 
その傷は
はじまりに過ぎなかった
 
 
そう
 
そのあと
何本もの傷をつけた
 
指先から流れ出る血
 
痛みさえもなかった
 
ただ…
 
何本もの傷をつけた
 
親の目の前で
 
心に傷をつけるなら
からだにつけてと叫びながら…
 
 
 
カッターで腕を切りつけた…
 
切り続けた…
 
ただ…
 
胸が苦しいだけで
痛みがわからない
 
 
わかるのは
歌が聞こえてくる…
 
子守唄…
 
ゆりかごの上で〜
カナリアがうたうよ…
ねんね〜こ〜
ねんね〜こ〜
ねんね〜こ〜よ〜…
 
 
 
 
 
 
口ずさみながら
切りつけていた…
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