磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「帰るなら俺家まで送ってくから。」

「は?い、いいよ!元々今週末実家──世田谷区の──帰る予定だったから親に迎えに来てもらう。」

「じゃ、尚更俺が送っていって親御さんに謝るよ。俺のせいでお前───。」

悠馬は辛そうに顔を歪める。

「あんたのせいじゃないし。地球が温暖化して暑いせいだし。まあそれは私達人類のせいなんだけど。」

───私、何言ってるんだろう。こいつのせいで昨日から調子狂いっぱなし・・・。

目を逸らして言うと、悠馬が力なく反論する。

「でも、お前がタクシーやバスで帰りたいって言ったのに俺が──。」

「それ言った時点でもうやばかったし。タクシーとかで帰っても体調悪くなったかもしれない。」

「でも、俺が女の体力のこととかわかってなかったから・・・。」

大きな体をした男がどんどんシュンと小さくなっていく。

「しつこいな。もういいって。逆にうざいから・・・。」

なだめるようにそう声をかけると悠馬が勢いよく頭を下げた。

「俺が悪かった!ごめん!」

「声大きいよ!ここ病院だから。」

「あ・・・。」

ガタイのいい男が慌てて口に手を当てる仕草がなんだか可愛らしくて真海は布団の中で思わずふっと笑った。

「そこ、座れば?」

その笑いに気づかれないように、子供を叱る大人のような口調で近くにある丸椅子を指差す。

「お、おお。」

悠馬が椅子に腰かけると、真海は天井を見たまま話し始めた。

「実は私、昨日あんまり眠れなかったんだ。昨日会った人のこと考えちゃって・・・あの人はね・・・。」
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