磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
土曜日。

真海はお気に入りの猫カフェに来ていた。靴と荷物をロッカーにしまって受付をし猫の餌を購入してから手を洗う。

部屋に入ると猫たちがいつも通り気ままに過ごしていた。

お目当てのエキゾチックショートヘアのエクレアを探すと、奥のクッションでのんびりしていたが、その前には男性の先客がいた。

ガタイのよいその後ろ姿にまさかと思うが、見れば見るほどその人にしか見えない。

猫を横から撮影しようと体の向きを変えた男性の横顔が見えた。

───北岡───!!

ブサカワな猫を前に緩みきった顔でシャッターを切り続ける悠馬は固まったままの自分には気がついていない。

───気づかれないうちに帰ろう・・・餌買っちゃったから、どこかに置いておけば猫達がすぐ食べてくれるだろう・・・。

すると、普段は人に興味がなさそうにマイペースに過ごしている猫達が、真海が持つ餌に気づいてわらわらと寄ってきた。

それは悠馬の熱い視線を受けつつ撮影されていたエクレアも同じだったようで、ゆっくり立ち上がるとのそのそと真海の方に歩いてきた。

───まずい!

そう思った時は既に遅く、悠馬が振り返った。
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