磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「落ち着いて。落ち込むのは後。なんとかしよう。時差は8時間だから、24時・・・今日のうちに送れば間に合う。」

今日はチームリーダーの葉吉とアシスタントの彩木は夏休みで不在、後輩の島田と高津は外出先から直帰、もう一人のアシスタントである玉川は定時で帰宅していた為、雑貨チームは悠馬と真海の2人しか残っていなかった。

「なんとかって・・・?」

すっかりうろたえている悠馬に真海は毅然とした様子で言う。

「量がすごいから、食品チームの翻訳ソフトが入ってるパソコンを借りて翻訳して、ポストエディット───訳文をブラッシュアップして機械翻訳的な翻訳を人がやった翻訳に近づける作業ね───は私がやる。」

「え、お前って英語・・・?」

「中学卒業まで海外に住んでた。」

「ええっ!?そうなのか!?」

真海は話しながら立ち上がり食品チームに相談しに行った。


借りてきたノートPCの前に座り翻訳ソフトを立ち上げる。

「大丈夫。古いデータだけど、うちのチームの過去のTM───翻訳(Translation)メモリ(Memory)、つまり日本語と英語を一対一の対訳形式にしたもの───と、TB───Term Base
、用語集ね───が取り込んである。これらを利用して似た文や一致する単語があれば自動的にそれを利用して翻訳してくれる。繰り返しの文や翻訳不要の数字部分も多いしこれだけのデータがあれば時間までに仕上げられる。」

「本当かよ・・・?」

悠馬が後ろから画面を覗き込んで不安そうに言う。
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