磁石な恋 ～嫌よ嫌よは嫌なだけ？～
「なっ！やめてよ！」

「なんだい？その薄いメイクと地味な服装は。最初は君だとわからなかったよ。もしかしてあの男の趣味だったりするのかな？」

「離して！」

「そうだよね。君は男の趣味に合わせるの得意だものね。あの頃も僕の為に全てを尽くしてくれた。」

その言葉にスッと寒気がする。処理されたはずの記憶がヒタヒタと心の中央目指して近づいてくるのを感じ、慌てて追い返そうとする。

「あなたが私を騙したんでしょ！」

「人聞き悪いなあ。君だって僕と付き合えていい思いしたでしょ？そもそも告白してきたのは君だものね。」

いやらしい、見下すような視線がついに真海の視線を捕まえ、強い悪寒をもたらす。

「ねえ真海。僕気づいたんだ。やっぱり僕には君が必要なんだよ。僕とやり直さないか。」

「はっ！？何バカなこと・・・」

「君が今本当にあの男と付き合ってたとしてもそれは一時の気の迷いだよ。僕と別れて転職し今の仕事にも慣れ、年齢的にもそろそろ恋しないとって焦って近くにいる男で済ませているだけの話さ。そんな無駄なことしていないで自分にふさわしい男と付き合うのが君自身の為だよ。」

真海は彼のその言葉に全身の熱が1ヵ所に集まり、一気に放出されるような錯覚を覚えた。
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