磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「バカにしないで!私はあいつに本気で恋してるの!あいつは私のこと、私そのもののこと大切にしてくれてるの!あなたは自分の為に私を所有したいだけ、愛なんかじゃない!あいつは違う!ちゃんと体温を感じる、心が繋がってるのを感じるんだから!」

───この人と付き合ってる頃は私の想いは一方通行だった。でも今は、あいつからは自分と同じ熱量を感じるの。

「へえ。なんだか引くほどダサくなったね。そんな恥ずかしいこと大声で叫んで見苦しいし暑苦しくて目も当てられないね。今日が涼しくて助かった。君はもっとスマートな女性だと思っていたから残念だよ。」

彼は真海の両手を解放するとやれやれといった様子で眉を下げた。

「そ、そういうことだから。もう偶然会っても話しかけないで。」

息を整えながら壁から背中を離す。やっと終わったと思い元彼から離れようとすると彼は力なく『偶然じゃないんだ。』と呟いた。

「え?」

「君に会う為に毎日この辺りに来ていたんだ。新しい携帯の番号も引っ越した家の場所もわからないけれど、新しい職場はハコイリギフトだって噂で聞いたから。この前会えた時は嬉しかったよ。」

「・・・。」

ここを去らなくてはと思うのに切なげに目を伏せる彼に釘付けになってしまい足が動かなかった。
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