磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「僕、会社辞めて起業したんだ。会社の僕の扱いに我慢ならなかったんだよ。この僕を支社にやろうとするんだから。確かに異動してからわかりやすい結果は出していなかったけれど、だからって有名大卒で容姿端麗で会社の顔としてふさわしいこの僕を本社から遠ざけるなんて、なんて下らない会社だと思ってね。こちらから捨ててやったのさ。支社に行かせようとしたのはモテない男達からの僕への醜い嫉妬だろうね。」

「はぁ・・・。」

───一体この自信はどこから来るんだろう。

「ビジネスの話をしよう。これは君にもチャンスなんだよ。」

「チャンス?」

「真海、君、僕の会社に来ないか。」

「は!?」

「僕と君が組めば素晴らしい結果が出せると思うんだ。僕らが数々の新商品を生み出したあの頃みたいに。僕が表に立って君が縁の下の力持ち。これがベストなポジションなんだよ。」

「え?え?何言ってんの?」

「君だって今みたいに多くの社員の一人としてやるより会社の中核として働けた方がやりがいがあるし、周りにも自慢できるよ。それにもういい歳なんだからそれなりの職についていないと恥ずかしいでしょ。こないだ会った時も車の中でつまらなそうにしてたもんね。」

元彼はこんなに素晴らしい提案をしてやっているんだ、ありがたいと思えとでも言いたげにドヤ顔で言った。
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