磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
*磁石な夜*
花火大会の日はカフェで13時に待ち合わせをし、軽く食事をしてからホテルにチェックインする予定で、食事を終えると14時になっていた。

「そろそろ行くか。」

カフェを出るとぎこちない様子で手を繋いで歩き出す。

───まだ慣れねえな・・・。

ホテルまでの道すがら浴衣姿の女性たちと何人もすれ違い、真海(まなみ)は少し後悔した。

───浴衣で来た方がよかったのかな?でもカフェで浴衣なのも変に目立つし、なんか張り切ってるみたいで恥ずかしいし・・・。

悠馬(ゆうま)はそんな真海を横目でこっそりと見る。

───ちょっと浴衣期待してたけど、色々大変だろうしな。

「・・・その、悪いな。」

「いきなり何?」

「お前は外見を俺の好みに寄せてきてくれてんのに、俺はそのまんまでよ・・・。」

「そんなの気にしてたの?あんたにそんなこと期待してないよ。」

カラカラと笑う真海に、悠馬は神妙な面持ちで言う。

「・・・実は今日の為に俺も頑張ろうと思って、お前の好きなバンドのボーカルの写真見たんだよ。でも、体型は変えられねえし、会社であんなチャラい髪形できねーし、じゃあ服だと思って、ホームページの写真の衣装は難しくても私服ならってSNSチェックしたけど私服も奇抜でさ・・・無理だったわ。投稿にブランドの情報がタグづけされてたからオンラインショップで詳しいサイズ見たけど、肩幅とか小さくて着れそうにねーし。」

「ぷっ・・・。」

「何がおかしいんだよ!?」

「あんたがああいう服装したとこ想像しちゃった。なんかハロウィンみたいでウケた。」

「失礼なやつだな。」

「そうやって考えてくれたの嬉しい・・・けどね。でもあんたはいつもの服がいい。」

前を向いたまま照れた様子で言われ、悠馬は胸がざわめくのを感じた。
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