磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「大貧民でいいか?」

「・・・・・・へ!?」

真海は飛び込んできた突拍子もない単語に耳を疑った。

「他のがいい?ポーカーとか、スピード!?俺、七並べとか神経衰弱はあんまりなんだよな・・・ババ抜きは二人でやってもあれだし・・・。」

彼の手元を見るとトランプ、チェストの上にはその箱があり、彼の言葉の意味がやっと理解出来た。

「・・・だ、大貧民でいいよ。」

「おおー!よかった!やっぱり泊まりと行ったらトランプだよな!それにしてもお前、カーテン閉めて夜の雰囲気出したいとか、やたらこだわるのな。」

意気揚々とトランプをシャッフルする悠馬を見て真海は何だか笑えてきてしまった。

「何笑ってんだ!?」

「あはは、は、はー、あーおかし。何でもないから早くやろ。」



トランプをしたりテレビを観てくつろいでからホテル内のレストランでビュッフェ形式の夕食を食べ、部屋に戻る。

「花火大会会場で見た方が迫力も臨場感もすごいけど、ホテルだと花火見ながらトイレにもすぐ行けるっていうのはいいよね。会場って仮設トイレに行列出来てたりするじゃない?」

「そうだよな。帰りも人多くてなかなか進めなかったり、駅で入場制限してたりして大変だしな。」

花火への期待に胸を高鳴らせながら部屋に戻ってくると、真海は吸い寄せられるように窓辺に向かいソファーに座って夜景に見とれた。
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