磁石な恋 ～嫌よ嫌よは嫌なだけ？～
その後は会話がないまま会社の駐車場に到着した。

着いたぞ、という意味で振り向いた悠馬は降りようとする真海に声をかける。

「ちょっと待て。」

そう言ってじっと見つめてくる。

「な、何？」

───あれ？こいつの顔ってゴリライメージが先行してたけど、よく見たら・・・そんなに、悪くはないかも・・・奥二重で意志の強そうな瞳と太めで形が良い眉毛・・・鼻は・・・。

一瞬彼の顔を見てしまっている隙に自分の顔に向かって手が伸びていることに気づき驚いた。

「な・・・！」

悠馬の指が目の下の肌に触れて、その部分がふわりと温かくなる。不覚にもドキッとしてしまった。

「・・・まつ毛、ついてた。」

「なっ、気安く触れないでよ！『ついてる』って教えてくれたらいいでしょ！自分でとるよ！」

「俺がとった方が早いかと思ったから。」

「それでも、『とっていい？』とか聞いてよ！そしたら『自分でとるからいい。』って言ったのに！」

「なんでそんなに怒るんだよ。変なところ触ったわけでもねえのに。」

「うるさい！先戻るから！」

───なんか、こいつの行動にいちいち動揺してしまっている自分にムカつく！

真海は車を降りると肩を怒らせながらビルに向かってつかつかと歩いていく。

「なんなんだ、あのヒステリック女・・・。」

───でもあいつっていつも厚化粧にばっか目がいっちゃうけど、そう言えば猫顔なんだよな・・・キュッと上がった目尻が印象的っていうか・・・いや、俺何考えてるんだろ。

悠馬はキーを抜くと鞄を持って車を降りた。夕方になって多少は気温が下がっていたものの、まだまだ暑さがどっしりと居座っていた。
< 9 / 118 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop