とある教員の恋愛事情


 高速では渋滞もなく進み、あっという間に若葉の家に着いた。車を止めた松永に、若葉は意を決して話しだした。


「あの、今日はありがとう。すごく楽しかった」

「うん、俺もすごい楽しかった」


 ……こういうのは、躊躇したら負けだ。いけ!
 若葉は自分の手をぎゅっと握りしめた。

 
 「…私、松永さんの事が好きです。」
 「え?」

 「好きです。松永さんは、私とお付き合いする気、ありませんか?」
「おつ…きあい……」

 若葉と目を合わせたまま、松永は固まっていた。



 
「私達、仲良くなって日が浅いですけど、これから、もっと、知っていきたいなって……」

 さすがの若葉も、段々声が震えてくる。目を逸らし、うつむいて自分の握りこぶしを見つめる。

 
 ……やっぱり、早すぎた?
 
 そんな後悔が浮かんできた頃――




 
「……嬉しいです。俺でよかったら、お願いします」



 若葉は目を見開いた。思わず松永の方を見ると、顔を真っ赤にした松永と目が合った。

「……っ!」
 
 松永は恥ずかしいのか手で自分の口元を覆った。
 つられて若葉も赤くなる。



 しばらく沈黙が続いた。



「あの……手、繋いでもいいですか」
ぽつりと松永が言った。


「はい……」

 手を差し出すとそっと握られた。

「いいですよね、手を繋ぐって。俺、今日はこの手の感触を忘れずに寝ます。
 …って、これ変態みたいですかね」
 
 ふふっ、と若葉は思わず笑ってしまった。
 
「じゃあ、遅くなっちゃうのでまた明日」

 そう言われ、若葉は車から降りた。
 松永も車を降りてきてくれる。



 
「……あの、もうちょっと、元気が出る事していいですか」


 若葉はそう言うと、松永に抱きついた。


「え、えっ?」

 松永は狼狽える。


 しばらく堪能して、若葉は離れた。


「よし、満足しました。おやすみなさい」
若葉は満面の笑みで部屋に帰っていった。





 
駐車場に残された松永は、はぁ、とため息を付く。
 
「………………なんなんだ…
 ………………可愛いすぎか……」
 
 
そう呟くとへなへなとしゃがみ込んだ。
 
 
 
 
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