とある教員の恋愛事情
9月22日
「かんぱーい、お疲れー!」
若葉と松永は、若葉の家で缶ビールを開けていた。
約1ヶ月前から付き合い始めた2人だったが、ここまでは怒涛の毎日で、ゆっくり会うのは久しぶりだった。
夏休み明け、まだ休み気分の抜けない生徒達は危なっかしい。最初の1週間は、生徒同士のトラブルや登校しぶりの子の対応に追われた。
そうこうしているうちに、9月中旬には林間学校があった。教員は朝から生徒とハイキングし、体調不良の生徒に付き添い、夜は部屋の見廻りと休む暇もない。
やっと、今日は祝日の金曜日。昼間に部活指導があったものの、待ちに待った3連休だ。
「あー、今月はめちゃくちゃ疲れた。酒が沁みる…」
いつもはあまり愚痴を言わない松永も、さすがに疲れたようだ。
「サッカー部はさらに新人戦もあったもんね。お疲れ様。うちの部活の愛音ちゃんが、彼氏がゴール決めたって喜んでたよ」
「え、あいつら付き合ってんの?全然知らなかった…」
「結構続いてるみたいだよー。音楽室からいつも校庭見て、彼氏の姿探してるよ」
「そっかー、いいねー青春してて。
……ところで若葉は、俺の事探してくれてるの?」
「へ?」
「音楽室から。探してくれないの?」
じっと見つめられる。
うわ、顔、近いんですけど…///
松永は、最初奥手なのかと思ったがそうでもないらしい。彼女になってからは、天然なのか計算なのか、こうして若葉を揺さぶるような事を言ってくる。多分、若葉の反応を楽しんでいる。
「探さないよ、仕事中に!そんな事考えてる先生、生徒も嫌でしょ」
「えー、こっそり見るくらい良くない?」
「ダメダメ!そういう気の緩みが不祥事に繋がるんだから!」
「ええー?そうかなー?」
真面目だねー、と笑われた。
話題は先日の林間学校に移る。
「林間学校、ホテルが豪華でびっくりした。前の学校は公立の施設だったから」
「あー、そうだよね。高原散策してホテル泊まって、なかなかリッチな内容だよね、ここの学校」
「温泉、もっとゆっくり入りたかったな。露天風呂あったのって女湯だけ?」
「男湯もあったよ。
…あ、そういえば、男子生徒がはしゃいでた。若葉ちゃんの風呂上がりがエロいって」
「え!?」
「俺はまだ見てないのにさー」
「えっ……と……?」
またじーっと見つめられ、困って思わず目を逸らす。
まだ2缶しか飲んでないのに、松永はもう酔いが回っているようだ。少し赤い顔をしていた。
そして、ぐっと抱き寄せられた。
「……今日、見せて?じゃないと帰らない」
「…………っ///」
若葉は顔が熱くなるのを感じた。