とある教員の恋愛事情
時間も8時を過ぎたので、2人は起きる事にした。
食パンと目玉焼き、トマトとレタスのサラダで簡単に朝食をとる。若葉が色々と材料を出しているうちに、松永が目玉焼きを作ってくれた。
「んー、目玉焼きの半熟加減ちょうどいい。松永さん焼くの上手だね」
「そう?よかった。…ねえ若葉、松永さん、じゃなくて郁人って呼んでよ」
「う、…何か恥ずかしいから」
「えー、すぐ慣れるよ。昨日はあんなに何度も呼んでくれたのに……」
「……っ///」
「ふっ、ごめんごめん。いいよ。若葉の好きにして」
松永はごちそうさま、と言って食器を持っていった。若葉はカフェオレをすすりながら後ろ姿を見つめる。
……悔しい。完全に松永のペースに乗せられている。
その日は気持ちの良い秋晴れだったので、車で1時間程の大きな公園に出かける事にした。
「うーん、何だか急に秋っぽくなったね」
広い芝生広場に着くと、若葉は深呼吸してそう言った。
あれだけ暑かった夏も、過ぎてしまえば少し寂しい。まだまだ半袖がちょうどいいとは言え、今日の風は秋の気配を含んでいた。
2人はバドミントンを始めた。
松永が有利かと思いきや、あまり得意でないらしい。若葉といい勝負だった。
落とした方が負け、と言う簡単ルールでラリーを続ける。3回負けた方が昼食をおごる約束だ。
「わ、急に強すぎ!」
「いや、加減できないんだって!」
「あーっ、届かないっ…」
結局、僅差で若葉が負けた。
この公園には軽食が食べられるカフェがある。そこへ向かう事になった。
遊歩道を歩いて行くと、色んな人とすれ違う。
ランニング中の人、犬を連れた老夫婦。
ベビーカーを押した女性と、2歳くらいの男の子。
すれ違いざま、男の子が転んだ。持っていたボールが転がっていく。
その瞬間、松永はさっと男の子を起こしてあげ、ボールを拾ってあげた。
「はい。大丈夫?」
「……うん」
「お、泣かないで頑張ったね。えらいえらい」
男の子と母親にお礼を言われ、松永はニコニコと手を振って別れた。
若葉はそんな松永を見て感心した。
「何か偉いね。小さい子どもの扱い慣れてる感じ」
「え?そう? うち、兄貴がいて、甥っ子と姪っ子がいるからかな。もう小学生なんだけど、超可愛いよ」
「お兄さんいるんだ。似てる?」
「んー、顔は似てるって言われる。でも、性格は似てないかな。兄貴は職人の仕事してて、ちょっとヤンチャって言うか…2個上だけど、結婚も早かったし。」
「へぇ…」
「でも仲は良いよ。今度紹介する。お前も早く彼女作れ、結婚して子ども作れってめっちゃ言われてるから」
……それは、私との関係を、結婚まで考えてくれてるって事…?
意味深な発言が気になって仕方なかった。