私は女の子にはなりたくない
 可笑しそうに笑いながら言葉を続ける紫乃に、どんどん恐怖を覚えていく。

 「そんなに、あんたのことが大切かよ。“あれ”だって、まだ未遂じゃない」

 あれ、とわざと言葉を濁して。

 私の中から消えることのない、あれを。

 グッと私の耳元に口を寄せて、言った。

 「お姫様気分で。調子乗ってんじゃないわよ」

 お姫様気分になんかなってない。

 そうなのに。

 その言葉が妙に引っかかって。

 「じゃ、行くわ」
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