MINE.
変化
ビルを出ると蒸し暑さが迫ってくる。日中ずっと研究室に籠っているから、今朝ぶりのそれに慣れない。
アイス、買って帰ろう。
そう決めると少し元気が出る。わたしの元気の出処はアイス。
「絹さん」
名前を呼ばれ、そちらを向く。どこにでもいるような名前では無いことは重々承知している。
「松田!」
その姿を捉え、跳ねそうになるのを抑えて駆け寄る。松田は苦笑いしながら掌をこちらへ見せた。
「転びますよ」
「いくつだと思ってるの。転ばないわよ」
「洒落た靴を履いているので」
足元を見る。低めのヒールだ。
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