MINE.
「五十鈴さんのお見合い相手の話ですか?」
「あー……今度そっちを聞いてくれ。この前大変だったんだ」
「はい。すみません、長々と」
仕事終わりの体を引き止めてしまった。
廊下の突き当たりを曲がると人影があり、驚き、雪見障子へと突っ込みそうになるのを、腕を掴まれて留まる。
松田が居た。
いつから居たんだろう。
「急に、居なくならないでください。心臓に、悪いので」
掴まれた手が冷たい。今日初めて、松田に触れた。
低い声も珍しく、顔を見上げる。
「ごめん、なさい。五十鈴さんに挨拶に来てたの」