MINE.
手が離される。
「そうでしたか。戻りましょう、夕飯は唐揚げでした」
「唐揚げ! 早く行こ!」
陽乃さんの唐揚げは美味しい。一人暮らしでも揚げ物は滅多にしないので、貴重な唐揚げだ。
テンションが上がり、いつもの感じで松田の腕を取る。
数歩進み、はっと思い出してその腕を離す。
今までの習慣を無くすのは難しい。
松田が怪訝な顔をこちらに向けているのを感じながら、頭の中で言い訳を考える。
「どっちが先に離れにつくか競争ね!」
と、そんな今どき小学生でも言わないようなことを言ってしまった。
もうこんなのは辛い、疲れる。
早く帰りたい。