MINE.

揺れも急ブレーキも少ない運転で静かに進む。

「わたしの我儘を仕方なく聞いてくれるところと」
「どうしたんです、急に」
「見た目はちょっと厳ついけど親切で優しいところと」
「前半要りますか」
「運転が上手なところと」
「……はい」
「きっと沢山大変だったのに少しも弱音を吐かないところと」
「……はい」
「嘘は吐かないところと……」
「絹さん?」

気付けば声が震えて、目から涙が溢れた。

緩やかに車が停まり、松田が振り向く気配がした。
それでもわたしは俯いてずっと泣いていた。

涙が止まらなかった。


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