MINE.
食いつくと笑われた。だってそんな貴重な機会は多くない。
「呉野さーん、エントランスから電話」
「はい、でます」
「え、もうこっちに?」
大場さんが子機に向かって首を傾げる。ちなみにこのフロアには二つしか電話が無い。確かにそんなに広くはないけれど。
差し出した手が宙ぶらりんになり、大場さんの様子を見ていると、ふらりと事務所に人の影。
「失礼します、お世話になってます」
「お疲れ様です……あれ、五十鈴さん?」
わたしの姿を探していたらしく、よ、と手を挙げた五十鈴さん。
「ああ、いらっしゃいました」
大場さんの声に、来客は五十鈴さんだったのだと分かった。