MINE.

会社を出ても松田は本当に居なくて、車もない。

「そんなに会いたいなら連絡して呼びつけろよ。お前が呼んだら来るだろ」
「来ると思いますけど……もうそういうのは辞めるんです」

駅の近くのインドカレー屋に入る。賑わっていたけれど、ちょうど端のテーブルが空いて通された。

「俺、お前のことすごい嫌いだったんだよ」

水を飲むより、メニューを開くより先にそう言われたので構える。

「何の話がしたいんですか?」
「お前を嫌いだった話」
「それは知ってますけど、そのお話どこに着地するんですか?」
「今は普通ってとこに」

ならば良し。メニューを覗く。

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