MINE.
暗闇
思えば、わたしは松田とデートをしたことも無かったなと思う。
外で一緒にご飯を食べたり、お酒を飲みに行ったり、服を選んだり。
夕飯の買い物に行ったことはあっても、そういうことを求めたら、松田はきっと普通にわたしの後ろをついて来ただろう。
決して、並ぶことはなく。
「ビルまでお送りします」
松田の言葉に、肩を竦める。
「すぐそこだし、五十鈴さんを待たせると不機嫌になるわよ」
「いえ、許可は貰いました」
「ああ、そう」
酷く冷たい言い方になった。いや、松田は気にしていないと思うけれど。