MINE.
「絹さん、疲れました?」
「……ん、最近暑いからかな」
「ちゃんと食べてますか? 細くなってません?」
「うん、食べてる。松田は?」
窓の外の景色が移り変わる。
ビルから離れて、駅のごちゃごちゃとした道を通って、わたしの家の方面へ。
高校を卒業するのと同じくらいに、父が他界した。
わたしを屋敷に置く人間が居なくなり、屋敷を出ることになった。
松田が本妻の方に申し出るというのを止めて、わたしは静かに去った。松田には呉野の家に居てほしかったから。
勘当されたわけでも絶縁になったわけでもないから、偶に屋敷には行っていた。