MINE.
占有

背中を押された感覚に驚いて顔を上げれば、唇の端が食まれた。
続いて、唇が重なって、下唇が舐められる。

何が起こったのかと固まれば、顎を掴まれて上を向かされた。

「くち、開けて」
「は……歯医者さん?」
「呉野絹さん、口開けて舌出せますか?」

松田が楽しそうに笑うので、わたしもそれに乗ってあげる。
ぱか、と口を開けた。

「じゃあ痛くなったら、右手挙げましょうね」

その右手を握られた。それでは挙げられないのでは、という冷静な考えを吹き飛ばすように舌を舐められ、吸われる。

苦しい、でも嫌じゃない。溺れそう、でもずっとこのまま……。
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