MINE.
出るはずがない。
本人は寝込んでいるのだから。
しかし、すぐそこにある獣の気配に、五十鈴は小さな焦りと疑いがあった。
どこからか、バイヴ音が聴こえた気がした。
五十鈴は顔を上げ、離れの方を見る。
『――はい』
出たのは松田だ。
「……松田」
『こんな時間に、どうされました?』
「絹は」
電話の向こうが静かになり、五十鈴はそこから去ることができなくなった。
「生きてるよな?」
病状を心配してのことではない。
それが松田に伝わるかどうかはまた、別の話だが。
『ちゃんと看てるので、大丈夫です。今は眠ってるので、電話には出られませんが』