MINE.
ふ、と獣の気配が遠退く。
穏やかな松田の声が続いた。
『もう熱も下がってるんですが、声が枯れていて。あ、絹さんに伝言あります?』
「いや、ねえな」
『わかりました。起きたら、連絡があったのを伝えておきます』
「なあ、松田」
何を言うべきかもわからないが、呼び止めてしまった。
五十鈴は離れへと背を向ける。
「絹のこと、大事にしろよ」
母屋へと歩いた。
『はい』
その返答を聞いて、通話を切った。
松田は五十鈴と絹の父が拾ってきた男だった。
近くの河川敷に釣りへ行った時、集団リンチにでもあったのか、ボロボロで草むらに横たわっていたという。