MINE.
齢八歳。まだ小学校に入ったばかりで、肉親が亡くなるとはどういう気持ちなのだろう。
呉野会長が引き取った絹は物静かだが、聡明で、芯を曲げない強さを持っている。
妾の子というだけでも腹立たしいものだが、そういうところも素子の気に障るのだろう。
素子と会うのを避けて、絹は母屋をふらつくことは無かった。
「どんな優秀な研究者だか知らないけど、他人の夫に手出すなんて、あんたの親は最低だわ!」
現場には既に大人が数人集まっていた。
素子を押さえる陽乃や、他の女中、豊橋もいた。
しかし、素子の手は絹のパジャマの襟首を掴み離さないので、その腕が振られる度、絹も連動して振り回される。